精製方式が『ナチュラル』に変わるだけでコーヒーの味わいが変化する理由:そもそもナチュラルって?

こんにちは!Beans Baseの赤沢です。最近、僕のカフェに「カフェをオープンしたいんです!」とお問い合わせいただくことがある。5年前は僕も同じことを思って様々な喫茶店のマスターに同じことを喋って周っていたっけ…。「カフェをオープンしたい!」という気持ちは素晴らしいですが、素晴らしくない点もあって。それは、行動力に欠けるということです。とりあえず行動に移したら、今よりもカフェを起業するための一歩に踏み出しているのです。行動の一種に他人(ほかの喫茶店の人)へ自分の思いを伝えるのは素晴らしいですが、それだけでは足りない。初手の行動はカフェの主役コーヒーを知るということです。コーヒーを知るにはどうしたらいいのか。こう、考えると道筋が見えてきますね。コーヒーを知るにはカフェで働いてみるか、独学でコーヒーを学んでいくということです。

このブログ カテゴリー:独学のコーヒー では、独学でカフェをオープンするためのコーヒーの知識を網羅的に公開します。

実は、Beans Baseの店主 赤沢 はコーヒーについての理解や知識のほとんどを独学で補っています。正直、怒られながら、揶揄されながら他店で雑務をこなしながらコーヒーを学ぶことに時間の消耗が激しいと思っていたからです。(時間の無駄と思ってた。)コーヒーのことだけを知りたいのにレジ打ちの仕事を覚えさせられたり、仕事仲間との「あいつが好き、あいつが嫌い」論争に巻き込まれるのが時間を効率よく使っているとは思えなかった。しかしながら、今となってはレジ打ちの仕事が、接客の方法を知る機会になるし、仕事仲間との無駄話がカフェ起業のためのキッカケになることもあることに気づいています。それでも、独学にこだわったのは、自分が未熟だったこともあり、またカフェ起業のための最短ルートを見つけたかったためです。どうか、このブログを見てカフェ起業のためのコーヒーの知識を基本から応用まで身に着けていただけることを期待しています。

コーヒーの知識を身に着ける最短の方法は実践してみることです。コーヒーを淹れる作業を。コーヒー機材を全て揃えて、それで適当にコーヒーを淹れてみる。そうすると、なんと不味いコーヒーが完成します。しかしながら、ここで「なぜ、こんな不味いコーヒーが出来上がってしまったのか?」と自分に問いてみましょう。そうすると自分の知らない知識、わからないコーヒーへの知識がはっきり見えてきます。この繰り返しをすれば、おいしいコーヒーに最短で行きつくはずです。また、自然とコーヒーへの理解、知識を深めることが出来ます。

コーヒーの精製方法:ナチュラルとは何か

はじめに

コーヒーの風味は、その栽培、収穫、そして精製のプロセスによって大きく変わります。特に、精製方法はコーヒーの味わいに直接的な影響を与える重要なステップです。本稿では、コーヒーの主要な精製方法の一つである「ナチュラル(乾式)精製」について詳しく説明します。ナチュラル精製の定義、手順、特徴、そしてコーヒーに与える影響について解説します。

ナチュラル精製とは

ナチュラル精製とは、収穫されたコーヒーチェリーを果肉ごと乾燥させ、その後に果肉を取り除く精製方法です。この方法は、果実の糖分がコーヒー豆に浸透し、豊かなフルーティーな風味や甘みを生み出すことが特徴です。ナチュラル精製は、特にエチオピアやブラジルなどの乾燥した地域で広く使用されています。

ナチュラル精製のプロセス

ナチュラル精製のプロセスは、以下の主要なステップから成り立っています。

1. 収穫

ナチュラル精製の第一歩は、完熟したコーヒーチェリーの収穫です。手摘みや機械収穫によって、成熟度の高いチェリーを選別します。特に品質を重視する場合は、手摘みで完熟したチェリーのみを収穫します。

2. 乾燥

収穫されたチェリーは、そのまま乾燥工程に移ります。乾燥は主に天日干しで行われ、チェリーは乾燥台(パティオ)やアフリカンベッドと呼ばれる高床式の乾燥棚に広げられます。乾燥の過程で、チェリーは定期的にかき混ぜられ、均一に乾燥されるようにします。乾燥期間は天候や環境条件によりますが、通常2〜4週間かかります。

3. 脱殻

乾燥が完了した後、コーヒーチェリーはパーチメント状態(乾燥した果肉と皮がついた状態)になります。このパーチメントを脱殻機(ハラー)を使用して取り除きます。脱殻により、内部のコーヒー豆が取り出されます。

4. 選別

脱殻されたコーヒー豆は、サイズ、密度、色などで選別されます。この選別工程は、手作業または機械によって行われ、品質の均一性を確保します。

ナチュラル精製の特徴

ナチュラル精製は、他の精製方法と比較して以下のような特徴を持っています。

豊かなフルーティーな風味

ナチュラル精製の最大の特徴は、豊かなフルーティーな風味と甘みです。果肉が乾燥中に豆に糖分を移行させるため、チェリーやベリー、トロピカルフルーツのような風味が強く現れます。

重厚なボディ

ナチュラル精製は、コーヒーに重厚なボディを与えます。これは、果肉が乾燥中に豆に与える影響によるもので、コーヒーがよりリッチでフルボディな口当たりになることが多いです。

一貫性の難しさ

ナチュラル精製は、乾燥プロセスが天候に大きく依存するため、一貫した品質の維持が難しいとされています。乾燥中の天候変動や不適切な乾燥管理により、発酵やカビの発生リスクが高まります。

環境への適応

ナチュラル精製は、水資源の少ない地域に適しています。湿式精製とは異なり、大量の水を必要としないため、乾燥した気候や水の供給が限られた地域で広く使用されます。

ナチュラル精製と他の精製方法の比較

ナチュラル精製は、ウォッシュド精製(湿式精製)やハニープロセス(半湿式精製)と比較すると、以下のような違いがあります。

ウォッシュド精製(湿式精製)との比較

ウォッシュド精製は、果肉を除去し、発酵・洗浄を経て豆を乾燥させる方法です。

  • 風味の違い: ナチュラル精製はフルーティーで複雑な風味、ウォッシュド精製はクリーンで明瞭な風味。
  • 酸味: ナチュラル精製は甘みが強く、酸味が控えめ。ウォッシュド精製は明るい酸味が際立つ。
  • ボディ: ナチュラル精製は重厚なボディ、ウォッシュド精製は軽やかなボディ。

ハニープロセス(半湿式精製)との比較

ハニープロセスは、果肉の一部を残したまま乾燥させる方法です。

  • 風味の違い: ナチュラル精製はフルーティーで甘みが強い、ハニープロセスはバランスの取れた風味。
  • 酸味: ナチュラル精製は酸味が控えめ、ハニープロセスは酸味と甘みのバランスが良い。
  • ボディ: ナチュラル精製は重厚なボディ、ハニープロセスは中程度のボディ。

ナチュラル精製がもたらす風味の例

ナチュラル精製によって生み出されるコーヒーの風味は、その地域や品種によっても異なります。以下に、ナチュラル精製による風味の例をいくつか紹介します。

エチオピア産ナチュラルコーヒー

エチオピアのナチュラルコーヒーは、しばしばブルーベリーやストロベリーのような強いフルーツの風味、ワインのような複雑さが特徴です。エチオピアの特有の品種と高地の気候が、ナチュラル精製と相まってユニークな風味を生み出します。

ブラジル産ナチュラルコーヒー

ブラジルのナチュラルコーヒーは、チョコレートやナッツのような甘くてリッチな風味が特徴です。ブラジルの乾燥した気候が、ナチュラル精製に非常に適しており、安定した品質のコーヒーが生産されています。

グアテマラ産ナチュラルコーヒー

グアテマラのナチュラルコーヒーは、トロピカルフルーツやストーンフルーツのような風味、しっかりとしたボディが特徴です。火山性の土壌と豊かな気候が、ナチュラル精製と組み合わさり、複雑なフレーバープロファイルを提供します。

まとめ

ナチュラル精製は、コーヒーの精製方法の中でも特にフルーティーで豊かな風味を生み出す方法です。果肉ごと乾燥させることで、果実の糖分が豆に移行し、甘みと重厚なボディが強調されます。この方法は、水資源の少ない地域に適しており、乾燥プロセスが適切に管理されることで、一貫した品質のコーヒーを生産することができます。

ナチュラル精製の理解を深めることで、コーヒーの多様な風味を楽しむことができるでしょう。また、産地ごとの特有の風味やプロセスの違いを知ることで、コーヒー選びの幅が広がり、より豊かなコーヒー体験が得られます。


参考文献・リンク

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投稿者 赤沢 征一郎

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